食品工場のIoT化に欠かせないロボットシステムを、工程別に紹介します。
主な工程それぞれにおいて、どのようなロボットシステムが求められるのかを紹介していきますが、実際のロボットを例として挙げながら解説していますので、イメージしやすいのではないでしょうか。
また、食品工場で求められるロボットはどのようなものなのか、という点についてもまとめていますので、ロボット導入を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。
食品工場では「調理・加工」から「梱包」までさまざまな工程があります。その中でも、特に複雑な作業が少ない工程についてロボットが導入されているケースが多くみられます。
例えば、大量のパウチの箱詰め作業や、あらかじめ定められた量をピッキングする作業、また出荷前に商品を運ぶためのパレットにダンボールを積む工程などがロボットにて行われているようです。いずれも作業効率化や人的コストの削減などの役割を果たしています。
食品工場では、数多くのロボットが活躍しています。
例えば飲料や食品をあらかじめ定められた容器に入れる充填機、仕分け作業に用いられるパラレルリンクロボットやピッキングロボット、また、スライダーと呼ばれる機器は製品を次の工程に運ぶために用いられています。
さらに、食品を出荷する際には厳しい検査をクリアする必要がありますが、検査の工程でも外観検査装置やX線異物検査装置、金属検出機などが活躍しています。そして、出荷前の梱包にもロボットを導入することによって、より効率的な作業に繋げています。
食品工場の主な工程は、以下のようになっています。
水平多関節ロボットとは、平面3自由度の位置決めと、先端部の上下運動による4軸構成となっているロボットです。
組み立てや基盤への部品配置に向いているロボットで、特に押し込む操作を得意としています。
充填機は、飲料や食品を決められた容器に入れる機械のことです。
飲料に使われる「液面規制方式」や粘度のあるものに使われる「ピストン式」、計量しながら充填する「ウェイト式」、計量機能付きの「フローメーター式」があります。
完全自動化ロボットは、名前の通りすべて自動で調理するロボットシステム。
外食産業を中心に調理の自動化のために導入されています。品質を保てることはもちろん、人材不足の課題解決と、人との接触を減らす効果もあります。
エクストルーダーは、粉末やペースト状態の原料を混ぜ合わせ、押し出すことで成形加工が可能な機械です。元々はプラスチック製品の製造向けの機械でしたが、現在は幅広い加工食品の製造で用いられています。エクストルーダーは内部にスクリューが設置されており、1軸式と2軸式があります。1軸式は原料の押し出しのみ可能なタイプで、2軸式は混合にも対応しています。種類によって特徴が異なりますので、自社に合わせた製品を選ぶことが重要です。
自動皮剥き装置は、野菜や果物など食材の皮剥き工程に特化している機械です。製品によっては魚の皮剥きも対応しています。食材の皮剥きを機械化することで、手作業と比べて生産効率の向上や、工数の削減による省力化が期待できます。自動皮剥き装置は、主にドラムピーラー方式やスチームピーラーがあります。ドラムピーラー方式は、内部のドラムが回転し、食材の皮剥きを行う装置です。乾式と水を使用するタイプに分けられます。スチームピーラーは、高温の蒸気を使って皮剥きを行います。一度に多くの食材の皮剥きが可能です。
盛り付けロボットとは、名前の通り盛り付けを行うロボットです。それまで調理や加工に関しては機械設備でも可能でしたが、盛り付けは難しいとされていました。しかし近年の技術進歩により、盛り付けが可能なロボットも登場。人間との協働型のものやレーンに設置するタイプが登場しており、いずれも人間と同等、もしくはそれ以上のクオリティを発揮することで省力化・効率化をもたらします。また、ロボットを導入することで他のスタッフの負担軽減も期待できるなど、倉庫環境に変化をもたらします。
フードプリンターとは、可食インクをさまざまな方法で食品に吹き付けることで、消費期限や企業ロゴ、精緻な写真やイラストなどを印字する機械です。大きく分けてサーマル式、ピエゾ式、コンティニュアス方式の3つがあり、それぞれ得意とする印刷方式が違います。また、サーマル式は比較的小型ですがピエゾ式とコンティニュアス式は大型になりやすいので、設置するならスペースが必要です。
パラレルリンクロボットとは、出力リンクとベースの間にリンクとジョイントで作られる連結連鎖が、複数個並列に配置された機構です。
主に仕分け作業に使われることが多く、耐久性や柔軟性を得意としています。
ピッキングロボットは、様々な商品を取り出して移動する作業を行うロボットのことです。
人間と比べて作業精度が一定で、長時間稼働できるため、生産性を高めやすいでしょう。
また、重量物も問題なく運べるので、怪我のリスクを結果的に抑えることもできます。機械で作業を行うため、人的要因によるミスの削減も可能です。反面、導入のための初期費用というハードルがある、人間と一緒に作業をするためには安全確保のためのスペースが必要になるといったようなデメリットもあります。
ある程度設置スペースも確保しておかなければならないので、工場に入るかどうか、機器の大きさやコストも確認のうえ導入を検討しましょう。
1軸のロボットであるスライダーは、モーター・直接案内機器・ボールねじで構成されています。
アームロボットなどと組み和わせることが多く、アームロボットを使った工程のあと、次の工程まで運ぶのに使われています。
製品整列ロボットとは、所定の位置へ高速で食品を整列させるロボットです。食品の最終包装にいたる前段階の仕分け作業として、ベルトコンベア上を流れてくる食品をピッキングして整列させます。かまぼこ、饅頭、ゼリーなど、さまざまな食品の整列に活用されています。
トレー供給機は、ライン作業において流れてくる食品を盛り付けるための器を射出するための機械です。従来はこの作業は手作業で行われてきましたが、トレー供給機を導入すれば生産効率が大幅に向上するほか、手作業にありがちなトレー内への毛髪などの混入も防げます。導入の際には、供給機のスピードがラインに合っているか、マガジン内の容量は十分かの2点を重点的にチェックしてから導入しましょう。
画像処理技術を活用した外観検査装置。人が目で見て確認する「目視検査」に近い、高精度な検査が可能です。
商品そのものにキズや異物混入、不良箇所がないかを確認する検査と、包装後に破れや噛み込み(包装のシール部分に内容物が挟まれている状態)がないかなどを確認する検査に対応します。
インターネットにつなくことで、パソコンによるデータ収集や分析も可能になります。
また、人と違って高精度な検査を長時間実施することができるため、ヒューマンエラーによる精度のバラつきなどの問題を解消することができるため、生産性の向上にも寄与できるとして、自動化を検討する食品工場が増えています。
X線異物検査は、対象物を壊さない「非破壊検査」です。X線には「金属であっても透過する」性質があるので、容器内でも異物を発見することができます。
他にも形状や個数の検査などにも対応しています。
梱包シール部分の異物検査に特化した装置。
シール部の噛み込み不良は持ちろん、内容物の異常発見(破損・異物混入・欠品など)や包装材の不良発生(容器の切れ・欠け・長さ不足など)に対応しています。
画像処理検査装置でも見つけることができます。
金属検出機は名前の通り、金属が入っていないかどうかを検出するものです。
加工や調理で生じる鉄や鉄粉が誤って製品に入っていないかを調べることができます。異物混入を防ぐために、重要な工程です。
画像処理検査装置でも見つけることができます。
インスタントラーメンなどでよく見かける枕状の包装を「ピロー包装」と言います。
製品を横に流す「横型」と製品を落下させる「縦型」の2種類があります。
パレタイジングロボットとは、荷積みや荷下ろしを自動で行う機械です。穀物類の重たい袋はもちろん、製品を入れた段ボールであったり、飲料を詰めたボトルケースだったり、幅広い食品工場で導入されています。
重量物でも短時間で大量に作業をこなせるのがメリットですが、形状が異なる商品は部品を付け替えなければうまくつかめないことがあり、そうした場合は運用をいったん止めて部品の付替えをしなくてはいけません。食品の品種や形が違うと調整が必要になる一方で、うまく活用すれば人員の安全確保や人件費の削減に繋げられます。品質管理がしやすくなるというメリットもあるので、自分の工場で取り扱っている商品の種類や形に合った使用ができるか確認してみると良いでしょう。
箱詰機とは、製品の出荷前に箱に詰める作業を行う機器です。あらかじめ決められた数を箱に詰めていくことができるため、人的ミスによる数間違いなどを防ぐことができます。
箱詰機は、横型箱詰機、縦型箱詰機、ラップアラウンド箱詰機といった3種類に分けることができます。また、箱詰めとともに遠隔モニタリングや検査などを組み合わせることもできるため、より効率的にロボットを活用できる可能性があるといえるでしょう。
パレット搬送ロボットは、大きくビーコンやバーコードといったレールが必要なAVGと自律式のAMRの2種類に分類できます。それぞれ特徴が異なりますが、近年ではAMRの需要が高まっています。なぜなら、AMRは環境を問わずに利用できる汎用性の高さが強みとしてあるからです。これまでロボットの導入が難しいとされていた倉庫への導入も可能にしました。
工場監視システムを導入することで、設備の可視化が実現します。結果、トラブル・アクシデントを未然に防止できます。トラブルやアクシデントは直接的な損失だけではなく、場合によっては会社の信頼性を損ねてしまうものです。つまり、工場監視システムによって会社の信頼性をも守ることにつながります。
協働ロボットとは、ベルトコンベア上を流れてくる食品に対し、人と同じ作業を行うロボットです。たとえば弁当の盛り付けのように、適切な食品を適切な位置へ配置するという複雑な作業をこなすこともできます。食材のカットやスライスにも協働ロボットが活用されています。
食品工場に特化したロボットシステムを提案しているロボットSIer。検査装置を搭載した整列・供給、箱詰めロボットシステムなどの開発を手掛けており外観検査の自動化で生産性を向上させます。
多くの仕入れ先の製品を組み合わせ、生産現場の課題解決につながるシステムを提案する産業用機器などの専門商社。工場の自動化やIoT化に注力しており、食品工場の温度管理を自動化させた実績もあります。
食品工場のみならず、OA機器業界や自動車業界など幅広い工場の生産ライン機器の製造実績を持つSIer。130人超のエンジニア(2021年4月時点)が在籍し、工場全体の自動化をマネジメントします。
※選出理由:幅広い業界の生産活動の高度化を推進する「FA・ロボットシステムインテグレータ協会」(https://www.farobotsier.com/)の会員であるロボットシステムインテグレーター138社(2021年7月1日時点)の中から、食品工場向けのソリューションを提供しており、かつ各ニーズの条件を満たした会社を選出しました。
(1)検査工程:食品工場の外観検査と高速生産を両立するロボットシステムを公式サイトで紹介している企業。
(2)温度管理:食品工場の「温度管理を自動化したい」というニーズに適した提案実績が公的機関に取り上げられた企業。
(3)工場全体:「工場全体のIoT化を進めたい」というニーズに適した規模の設備、製造実績を公式サイトに掲載している企業。